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TCH(上下歯列接触癖)について
TCHとは
「TCH」という言葉を、みなさん聞いたことがありますか?
日頃の生活の中で、口腔内の不快感や痛み、頭痛や顎関節の不調、噛む力の偏りがある場合に、疑われるのは「TCH」です。
今日は、このTCHについて取り上げます。
まずは、次のような症状はございませんか?
◆口腔内の不快感や痛み
- 噛むときや口を開けるときに、歯や顎に違和感や痛みを感じる。
- 歯が敏感になり、冷たい飲み物や食べ物に対して過敏に反応する。
- 歯ぐきの腫れや炎症が起きる。
◆頭痛や顎関節の不調
- 頭痛が頻繁に起きる。特に、朝起きたときや噛む動作後に症状が現れることが多い。
- 顎の関節(顎関節)が痛み、開け閉めや口を大きく開けることが困難になる。
- 顔や頭の筋肉が緊張し、疲労感や張りを感じる。
◆噛む力の偏り
- 特定の歯や歯の一部に過度の噛む力がかかる。例えば、TCHがある側の歯が摩耗している。
- 食べ物を噛むときに、一方の歯や側ばかりを使ってしまう。
- 歯のかみ合わせが不均衡であるため、正しく咀嚼することが難しい。
これらの事例がある場合は、TCHの疑いがあるのです。
このTooth Contacting Habitの略で、日本語で言うと<上下の歯を接触させる癖>のことです。
TCHはわずかな力でも、「持続的に上下の歯が接触している状態」のことをいいます。
1日のうち、食事や会話を含め上下の歯が接触している時間は大体20分程度と言われています。
1日3回の食事を摂ることを考えると、歯が接触する時間が20分程度といわれるのは少ないかのように思われますが、食事の際に下の歯と上の歯の間には
食べ物があるので、歯と歯が直接触れ合う時間は僅かになります。
この時間以外も、上下の歯が無意識のうちに接触することで不調をきたすのがTCHです。
上下の歯の接触時間が長くなると、筋肉の緊張や疲労や顎関節への負担が増え、起床時症状(顎の疲労感,歯の違和感,口が開きにくいなど)や顎関節症など様々な不定愁訴に関わっている可能性があると考えられています。
通常リラックスしている状態であれば、上下の歯は当たることなくわずかな隙間があいています。
この1~3mmの隙間のことを「安静空隙」と呼びます。
TCHにより、常に上下の歯が接した状態が続くと、歯に圧力がかかり、歯を支える歯槽骨にも過度な負荷がかかるため、歯や歯周組織だけでなく全身にも大きな影響を及ぼすことになります。
「TCHの原因」
TCHはうつむいた状態で長時間集中して、パソコンやスマートフォンの作業を行うことや、テレビを観ている時などのように何かに集中している時に起こりやすく、他にストレスや緊張なども原因であると考えられています。癖として無意識にやってしまう事なので、自分で自覚することは難しいと思われます。上下の歯の嚙み合わせの不調和もTCHの原因になると考えられています。
「TCHのチェック方法」
TCHや歯ぎしりをしているかなどは自分では気づきにくいことが多いです。
初期症状にあらわれやすい下記の症状を感じたらTCHや歯ぎしりを疑いましょう。
・詰め物がとれやすい
・歯がしみる
・起床時に顎や顎の周りがこわばっている感じがある
・舌圧痕がないか?→舌の先端や周縁(側面)に歯のギザギザした跡(舌圧痕)が残っている状態をいいます。
・頬粘膜に咬合線がないか?→ TCHがある場合、頬の内側の粘膜部分に白い線(咬合線)が出ます。
咬筋(頬)が噛むことで頬粘膜が歯の側面に密着し、長い時間継続されることで、咬合線がくっきりします。
次にTCHの有無をチェックする方法をご紹介します。
1・姿勢を正しくして正面を向き、目を閉じます。
2・唇を軽く閉じます。
3・上下の歯が接触しないように少しずつ離していきます。
1~3を行った際に、顎周辺や口に違和感を感じたり、その状態を5分維持できないようであればTCHの可能性があります。
意識して上下の歯を離すことに、ストレスや違和感があるかがチェックの指標となります。
「TCHがもたらす口の中の症状」
・歯周病の悪化 ・歯並びの悪化 ・知覚過敏 ・詰め物や被せ物の破損や脱離 ・歯の破折や欠け ・エラの張り ・口内炎 ・ドライマウス ・開口障害など
上記以外にも、口の中以外の症状として
・顎関節症 ・頭痛 ・肩こり ・耳鳴りなど
「TCHを改善する方法」
・唇を閉じて歯と歯を離す事を意識することです。唇を閉じて、上下の歯を離し、顔の筋肉の力を抜くことを意識的に努力してみてください。
1日に何度も練習するといいでしょう。
・パソコンの端や冷蔵庫の扉など日常生活で目にしやすい場所に「歯と歯を離す」や「歯と歯をくっつけない」や「力を抜く」
等を書いた紙や付箋などを貼っておきます。もし触れていたら歯と歯を離すようにしてください。
貼る場所を変えたり、付箋の色を変えたり、1か所ではなく複数枚貼るのもおすすめです。
歯と歯を離すことを自分で意識づけることが大切です。
・少し下を向いた姿勢はTCHにつながりやすいため、普段の姿勢に気を付けるようにしましょう。
長時間同じ姿勢での集中した作業はTCHを起こしやすくなるため、作業の合間にストレッチや呼吸法を意識的に取り入れてみましょう。
深呼吸は気持ちのリラックスにもなります。深く息を吸い込むと、自然と身体が伸びて、歯と歯の間に隙間がうまれます。
顎を突き出さないようにしたり、猫背にならないよう姿勢を正したり、少しうつむいたような首を下向きにし続ける姿勢(スマホ姿勢)に注意です。
・うつ伏せで読書をしないこと、頬杖をつかないように気を付けましょう。
TCHは自覚のない病気といっても差し支えないかもしれません。
また、影響は全身に出ている可能性もあります。
何も症状が出ていなければ単に「癖」ということですまされますが、顎の疲労感や、首が痛い、肩こり、頭が痛いなどの不定愁訴にTCHが影響している場合もあり
ますので、自分で癖を自覚することが重要です。